肉体言語

当初書きたかった話と違う話を書いてしまったけど、余は満足じゃ。


 ●

私はフリーランスライターです!
品川にマンション買ってくれる男がいいな!

というのが、力を持った「言葉」だ。

 ●

俺のスマホには、未読の新刊が7冊ダウンロードされている。
今でこそ名前で検索すると色々な電子書籍ストアの作品が出てくるけど、
最初に買った本が出たのは、移住開始二週間後。
事前合宿で「ライター」と名乗っていた頃には、肩書きを裏付ける物はほとんど無かった。

つまり、時系列で言えば、彼女を「ライター」にしたのは、彼女自身の宣言なのだ。

もちろん、あとで自分の作品を出版するという算段があった上でのことだし、著書の中で、
「事業の場を拡大できるきっかけになる場所を探す」「メディアの注目度が高い集まり」
ということが書かれているように、宣言する場を狙ってやった事だろう。

 ●

ところが、この人物が「ゆるい移住とは何なのか」を言葉にする際に、
「ライターとしての実績を作るため」と言うと、それは歪んでしまう。

仕事よりも、カネにならないブログ書いてる方が楽しい。
書くこと自体が楽しいんです、元々書くことが好きなのでこれでいいんです、と言う。
電子書籍の仕事はもうやらなーい、とか言って、目の前でさぼってブログを書き始めている。

どうしてそうなったのか。
それは、彼女が「想像」の世界から、「体験」の世界に移住したからだ。

最初の頃は、ネタにする観光名所を決めて、
ここに行ったら、だいたいこんなもんだろう、という想像をして、
それから取材に行って、想像通りの記事を書いていた。

それが想像と違うことが現実に起き始めて、観光名所も行き尽くして、
自分から何もしないでも人に色々誘われるようになって、
取材もしなくなったし、気がついたら飲み会ブログになっちゃってた。

 ●

それは、ゆるい移住メンバーの嗜好が、「場所」から「人」に移行している証左だ。

俺は最初から気がついていたぜ、って人もいるけれど、
まあ参加メンバーが各々のタイミングでそれに気づいていった結果、
全体として一ヶ月半が過ぎた現在、「人」のつながりで暮らすように変わったと思う。

いっつも近くにいる人だけネタにしてるので、たまには違う人の話をしよう。
俺がデートに誘った時に「靴を干しているから無理」と断った女性の話だ。

彼女はいつも単独行動をしていた。
それで、他のみんなから「何しているかわからない謎の人」と言われていた。
ミステリアスで素敵・・・ってことにもならず、「得体の知れない移民」は周囲を不安にさせる。

あの人、なんで来たんだろう。何を考えて暮らしてるんだろう。どうするつもりなんだろう。
まあ歓迎会とか鍋とかには呼んでおこう。断られたら深追いは避けよう。
みたいな感じで、一時期は恐る恐る接していたような気がする。

それが、スティックリングを始めてから、すっかり変わった。
男子2人も誘うようになって、車に乗せて週3回通っているそうな。
公式ブログにも話題が取り上げられた上に、クラブの代表である市議さんを飲み会に連れてきた。
今や、ゆるい移住のパーティーに、新たな横の繋がりをもたらす、キーパーソンになったのだ。

 ●

市長の誕生日を祝う時にも、木こりに出掛けていたメンバーが車で送られてきた。
送ってくださった木こりさんも凄い人らしく、市長と楽しそうに話していた。
日曜日にはイノシシと熊の肉でパーティーをするらしい。

木こりも、ゆるい移住のメンバーが出掛けてた「場所」で知り合ったのが始まりだ。
すんげーおもしれーみたいな体験談を聞いて、男女3人が代わる代わる体験しに行った。

博覧会でナンパしてきた男を連れてきた、だけでなく、
至る所で人と人とが繋がり、そのイベントだけで毎日の予定が埋まるようになったのだ。

俺なんかはメンバーの中で一番外に出ていないし、何もしていないけど、
それでも休肝日を作る暇が無いほどの、楽しい日々を過ごしている。

 ●

「想像」から、「体験」へ。
「場所」から、「人」へ。

そういう変遷を味わったんだよ、という事を、急に書きたくなったので書いてみた。

PageTop