居住実態

気持ちが入っちゃってて言及を避けたんだけど、タブーを書く覚悟を決め直した。

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俺は旅行が好きだ。
それも、一週間単位で飛び回るようなのがいい。
日帰りとか一泊二日なんてのは、非日常に浸る前に終わってしまうじゃないか。

東京で暮らしていた頃、旅行をするのには後ろめたさがあった。
二週間の旅行に出るってことは、家賃の半分をドブに捨てることに等しい。
水道光熱通信費もかかるので、一日あたり5千円ほど無駄にしている計算だ。

旅先で極限まで節約した日は、移動を入れても5千円以下で過ごせるのに、
なんにも使っていない東京の家は、黙って5千円を財布から抜いていくのだ。
この理不尽さに耐えられなくて、「勿体ないから旅行をしない」という有様だった。
俺にとって、東京生活は負債だったのだ。

そういう背景があるからか、東京の人の旅行は、日数自体が短い。
新幹線で行き来して、高い旅館に泊まって帰ってきます、みたいな。
それはそれで凄いお金の使い方だなあと思うんだけどね。

不動産屋さんにも「長期旅行に行く時は連絡してください」と言われた。
いやいや、年末年始の帰省とか普通にするでしょ? あほなの? と思った。
まあこれについては、三週間の帰省を終えて年明けに帰ったら、
観葉植物が見事に全滅してた俺のほうがあほだったけど・・・。

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ともあれ、三週間の帰省で住民票を移す、なんて話は聞いたことが無い。
二泊三日の旅行に転出届けを出さないのと同じことだろう。
逆に、一ヶ月だけ転入して保険に加入して治療したら出て行く、なんてのが問題視されてて、
一年以上住む予定がある人を目安に転入届を出して欲しい、みたいに言う自治体もあるらしい。

「住む」って、どういうことなんだろう。

「転入」は、住民基本台帳法第22条に定められており、
「住所」は、地方自治法第10条に定められているのだけど、
「居住実態」は、たぶん法律に定められていないと思う。
「一時的な居住の場合は転入届を出さなくても良い」みたいな条文も見当たらない。

民法第22条から第24条までは「住所」「居所」「仮住所」に言及しているが、
何が住所で何が居所なのか、という定義は為されていない。

実際のところ、本人と自治体の判断に委ねられて、あいまいに運用されているようだ。

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同居人は10月2日には転入手続きを済ませて、その日のテレビで鯖江市民として喋っていた。
しかし翌日には千葉に旅行に出て、三泊ほど不在にしていたのだ。

これを非難して「10月6日の夜に帰ってきたんだから転入は10月6日だろう」と言うと、
市有財産使用許可証に定める期間(10月1日付けでの居住)と相反することになる。
ましてや、1日と2日は一緒に宅飲みしていたのだ。写真も撮ってある。

でも裁判とかだと「水道代が500円だった」って理由で「居住実態が無い」と断定するんだよな。
それで「銭湯に行ってましたが何か?」みたいな反論をすることになる。

なんつーか、すんごい、どーーーでもいいやりとりじゃね? それ。

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選挙に出馬する資格としての根拠は、公職選挙法第9条の2に定められている。

2  日本国民たる年齢満二十年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。

ちなみに被選挙権自体は第10条で定められていて、
その中に第9条の「選挙権」を有する者、という条件が記載されているという関係だ。

ここでも「居住実態」という言葉は出てこない。だとすれば判例かな。
判例を調べるのは大変だな・・・。このあたりかなあ。

昭和29(オ)412
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56190


一 およそ法令において人の住所につき法律上の効果を規定している場合、反対の解釈をなすべき特段の事由のない限り、その住所とは各人の生活の本拠を指すものと解するを相当とする。

住所とは各人の生活の本拠を指す。

平成17(行ウ)39
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=6556


住民基本台帳法にいう住所とは,生活の本拠を指し,一定の場所がある者の住所であるか否かは客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものであり,

「居住実態」の定義はされておらず、住所であるか否かは「客観的に」決す、と書いてある。

よくわからんな。水道会社が儲かることは「客観的」なんだろうか?
うちの実家の風呂場は、シャワーのパッキンが壊れて水が常に漏れてるんだけど、
それで水道代が余分に取られたら、俺は実家に居住実態があることになるのかねえ?

証拠にしようと家の写真を撮っても「その一瞬しか居なかったかも知れない」と言われるし、
これって実は、客観的に証明するのって無理なんじゃないの?
ライブカメラで24時間自宅でも映せばいいのか?
テレビ局がリビングに24時間カメラを設置してたのは、俺のアリバイを立証するためなのか?

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そもそも政治は誰の為のものなのか。

当然に、市民のためのものだよね。
そして市民は旅行にだって行くものだ。

その市民が選挙権を行使して選んだ結果に対して、落選した人が、
「何日間不在だったからお前の当選は無効だ。(そして私が繰り上げ当選する)」
と主張する事自体が、民主主義の本質からかけ離れているような気がする。

鯖江市議会の議員の議員報酬および費用弁償等に関する条例によると、
議員の報酬は月額407,000円なのだそうな。
http://www5.city.sabae.fukui.jp/reiki/reiki_honbun/r400RG00000634.html

この40万円が欲しいがために、人は争うんだろうかね。
それとも単なる嫉妬心?
あるいは、若手議員に権力を回したくない人たちによる圧力?

動機はわからないけど、それは市民のためになることなんだろうか?

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「居住実態」って、別に誰かを助けたり、世の中をより良くするものだとは思わないなあ。

どこぞの宗教団体が支持党を当選させるために一斉に住民票を移して投票する、
という話を聞くと、ルールを悪用して利権を得ようとしているのだから嫌だけれど、
近くで暮らしてて、一緒に遊びに行ったり飲んだりしてる人が、
そういう巨悪と同じように扱われているというのは、全然ピンとこない。

ましてやそのために悪口を流布したり、人んちの洗濯物の写真を撮ってるほうが、
なんか犯罪臭がするというか、悪い意味でストーカーチックじゃないかなあ。
引きずり下ろした先に何があるんだろう、とか穿ってしまう。

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永住への期待も同じで、一種の幻想なんじゃないかと思うんだよ。
長く住んでるほうが理解もするし利益になる、みたいな話は、実は根拠に乏しい。

伝統もルールもそりゃ大事だけれども、
既得権益とか古い考え方に縛られて、目の前の問題に取り組めないのは残念だね。

ゆるい移住者が住民票を移したから成功、というのも、安易な物の見方だよ。
人数とか期間とか金額とか、なにかと数字に洗脳されすぎだ。

もうちょっと「ゆるい」ところに答えがあったって、いいと思うんだけどなあ。

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